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湯ツーリズム

〜テルマエな那須の温泉めぐり〜

 

11月の下旬に那須に出向いた。 すでに那須連山は冠雪していて寒々しい。 

こんな時季に那須で過ごすのは初めての経験である。

 

山の木々は葉を落とし、貧弱にやせ細った枝の間から何時もより多くの空が見える。 

 

そこから隙間風が吹き込んでくるのである。 

なんとも寒々しい。

 

メタボな上に厚く重ね着をした初老のおやぢが乗った車の中は、逆に狭苦しくフロントガラス以外から

景色を望むのは困難である。一体何が悲しくて冬支度を始めた那須にやってきたのか。 

話すと短いが書くと長くなってしまう訳がある。 ???・・・・

何も深く考える必要などない。

要領を得ないため簡単に事を説明出来ずにだらだらと書き続けているだけの事である。 

だけど、これは紙面(紙じゃないけど)を埋めるには好都合じゃないか。 そんなことを考えていた。。。

 

私は長い間、日本人の中高年にはメタボ体質が多いと信じて止まなかった。 

 

齢とともに代謝が悪くなり人は太るものであると思い込まされていた。ところが人で溢れるスーパー銭湯のサウナ室でふと気づいたのだが意外に太った中高年は少ない。完膚無きまでに打ちのめされた私の頭の中では銅鑼の音のようなものが何時までも響き続けたのである。呆然としているとエロっぽいお姉さんが私の傍らにやってきてぶよぶよした顎の下とか弛んだお腹の肉をくねくねと揉み始めた。落ち込んでいる私の表情を読み取たのか「このあたりを揉むのとっても気持ちがいいわ。痩せてしまうとこの感触がなくなってしまうから嫌よ」とそっと耳元に息を吹きかけるように囁いた。 

私はエロ姉さんから身体を弄ばれるのを潔しとしない性質なので大声で叫んだ。

「立ち去れ悪魔よ。 俺はお前のエロフェロモンに溺れるような弱い男ではないのだ。 

ここを去って豚小屋にでも行って雄豚の股間でも揉んでいろ」

この時私は我に返ることが出来たのだ。 サウナ室では多くの人が不思議そうに私の顔を覗き込んでいた。

当然のことながら私は死ぬほど恥ずかしく赤面の思いであった。だがこれをきっかけに私は痩せてみようを思ったのである。

 

時を同じく心を病んでいる男がいた。 

 

経営が危ぶまれている大手家電メーカーに勤めていた男である。早期退職を余儀なくされてしまってさぞや落ち込んでいることであろう。那須でゆっくりと温泉に浸かって心の傷を癒せばよいのではと思い声を掛けた。その男は私と同じ身長であるが私よりも12kgも太っている。(早い話92Kgである…)

 

以前私は身内の医学関係者に「お前は今のままの体重では10年後には確実にこの世にいないぞ」と脅かされたことがあった。なるほど今の私は人間の限界なのかもしれないと思った。これ以上太ったら見るもおぞましい化け物と見間違えられることであろう。であるならば先ほどの男の寿命は風前の灯であるかも知れないし彼はもはや人では無いのかも知れない。

かくして彼はメタボ先輩と名を改めることとなった(MTB92)。 

そして那須での湯治はダイエット合宿と呼ばれるようになったのである。

 

ケロリン軍曹&MTB92のダイエット湯治合宿 〇月〇日(11月だけど)月曜日

到着後まず最初に考えたのは食事の事である。 

炭水化物は余りとらずに野菜中心のメニューにしようと思った。

そして溜るストレスは温泉で癒そう。 

そう思い未だ訪れたことのない温泉に行って見ようと探し出したのが北温泉である。 

 

小雨交じりの午後ここに到着した。茶臼岳(那須岳)の山頂近くまで車を走らせ、

少し谷間に下った所にそれはある。途中車内に異臭が漂った。それが温泉特有の毒性のガスなのかそれともメタボ先輩の放ったものなのか真相は不明である。いずれにしてもゆで卵の腐ったような強烈な臭気は私の鼻腔の粘膜を強く刺激した。

 

駐車場から400mほど坂道を下ったところに北温泉旅館はあった。 

どこかで目にしたことのあるような光景である。デジャヴュではない。 

そこは映画テルマエ・ロマエのロケに使われた温泉宿であった。 

ここには五つの温泉があるが日帰り入浴で利用できるのは天狗の湯と河原の湯の二か所だけである。 

裸体を人に見られても構わないのであればプールとよばれている泳ぎ湯も利用出来そうである。お湯は無味無臭で特別のものではなさそうだがなかなか湯ざめをしない泉質である。

 

我々が最初に入ったのが天狗の湯である。 

 

かなり古くて鄙びた浴室の壁には大きな天狗の面が掛けられている。大きな丸太から彫りだして作られたものだろうか。それとも鼻の部分は後から貼り付けられたものだろうか。いずれにしてもその鼻の大きさには惚れ惚れとしてしまう。私は自分の腹の下に視線を落として見比べた後に呟いた「負けたかも知れない…」

 

メタボ先輩がお湯に浸かると豪快である。 

 

ものすごい轟音とともにお湯の大半が湯船からあぶれ出してしまうのである。この人を湯船に入れておいてお湯を張ると経済的である。逆に並々とお湯を張った湯船にこの人が入るとお湯がこぼれてしまい不経済である。だがここは天然かけ流し温泉、そんなことを心配する必要はない。

 

天狗の湯で少々気になることがある。脱衣室(脱衣室というより土間の廊下のようなところだが)と女子トイレが同じところにあるのである。天狗の湯に入るため猿股を下していたらマイ天狗をオバちゃんに観察される危険が伴うと言う事である。日帰り入浴は閑散としていて生憎というか幸いというかオバちゃんの好奇の目に曝されることはなかった。

河原の湯と呼ばれる露天風呂の脱衣室はまだ新しく男女別になっているので、あなたはストリップショーをせずに安心して入浴することができるのだが湯船は小さくすぐそばに砂防ダムが見え景色は味気ない。多少の性的危険は冒しても天狗の湯にチャレンジすることをお薦めする次第である。

 

温泉以上に魅力的なのが旅館の建物である。これが何時頃建てられたものなのかはわからない。 戦前のものだろうか、いや大正、あるいは明治時代のものだろうか。それとも安政の江戸時代のものか…。とても古くて迷路めいていて面白そうである。

帳場付近にあるソファーに腰かけてみた。古い米櫃がテーブル代わりに使われている。この時廊下の方からガラガラと騒音がする。 やがてミニスカートを履いた若い女性が二匹、いや失礼、二人スーツケースを引きながら帳場にやってきた。 

 

壁に貼られたテルマエロマエの撮影風景のパネル写真を見て燥いでいる。

 

二人を追っかけるようにカメラマンがやってきて、うっふんポーズをしてシャッターをバシャリ。この二人はヌードモデルに違いない。宿泊客の少ないこの時季の平日にやってきたというのが何とも怪しい。

想像しただけで脳みそが沸騰し始めた。危ない、危ない。エイトマンならここで煙草を吸ってクールダウンするのだが生憎タバコをやめて五年になる。両手で必死に股間を押さえつけクールダウンに努める。

 

エロ姉さんたちが帳場を去った後、私も好奇心でテルマエ・ロマエのパネル写真を眺めて見た。映画のシーンを思い出した。上戸彩ちゃんが腰かけていたのはこの辺だったかなと腰を下ろした。ソファーの柔らかさがお尻に伝わってきた。次第にそれが彩ちゃんのお尻に思えてきた。「いけません! いけません! 相手は人妻」そんなことを考えていると、映画の撮影後幾人となく変態親父どもが彩ちゃんの席を陣取り腰かけて、お尻をくねくね躍らせながら心の中で「彩ちゃーん」と叫んでいる姿が脳裏に写り逆に気色悪くなってしまいました。

 

逃げるように旅館を飛び出したのだが今にも泣き出しそうだった空からは、すでに土砂降りとは言わないまでもかなりの雨が降っていて400mもの坂道を駆け上るほかになかった。途中私よりかなり早めに旅館を出発していたメタボ先輩が息をぜいぜいと切らしながら歩いているのが目に入った。車に戻った後かなり待たされる羽目になった私はメタボにもレベルの違いがあることを思い知ったのである。

 

びっしょりと身体を濡らし湯冷めをしてしまったメタボ先輩に私は声を掛けた。

 

「こんな悪天候の中寒い思いをさせてしまったね」

 

メタボ先輩は私の発言を否定するかのように「本当に寒いのはこんな曇りきった雨天の日じゃなくて晴れ渡った日だよ」 

 

この男は未だに天空の星が凍てついて地上に落ちてきたときに寒くなると信じているようだった。


まだまだ続く那須温泉めぐり

 

次回は〇月〇日(11月だけど) 火曜日 鹿の湯の巻